よるくま@真夜中の虹 膠原病・心筋梗塞 闘病記

膠原病~心筋梗塞/発病・入院・共存の記録 体に耳をすます日々の日記

[2008年6月]退院後1か月 病状の整理

20086162:43

【疾】診断名・現状・予後

 

診断名:シェーグレン症候群、後根神経節炎、抹消神経障害
診断日:2008414
発症原因:不詳
入院期間:2008326日~517

 ◆所属組織に提出した病状報告書(57日)から抜粋

 *一部その後の経過を追記

1.病気概要
(1)病名
【シェーグレン症候群(SjS)】
 膠原病の一つ。全身性自己免疫疾患で国内の推定患者数は約2万人。唾液腺、涙腺を始めとする諸分泌腺が障害される腺症状を主症状とする他、関節、腎臓、肺、神経に障害を生じる。他の自己免疫性疾患と同様、抗体反応の異常により、自らの細胞や蛋白質を抗原とみなし攻撃する疾患。原因は突然変異、体質、環境因子等とされるが未解明。都道府県難病指定対象疾患。症状の寛解はあるものの、自己免疫反応は継続するため、通常は症状が出ない状態を維持しながら服薬を継続する。

【後根神経節炎】

 SjSは通常唾液腺、涙腺に障害が出るが、腺に対する抗体反応のため、稀にその他の腺に症状が出ることがある。今回の症状は、脊髄から出る神経細胞の節に栄養を供給する腺が、自己免疫により攻撃され破壊されて機能しなくなったことにより、最下部5番目までの後根神経節が障害を受けた。症状の詳細は顕微鏡レベルのことであり検査不能であるが、恐らく髄鞘の脱落や神経細胞の損傷が起きていると考えられる。

【抹消神経障害】

 後根神経節で中継されている神経の機能不全により、感覚神経機能に障害を生じている。具体的には、腹筋、大腿部~足部の表在感覚(熱感・音感・冷感・圧巻・振動覚等)神経障害、位置感覚障害等。これにより、結果として主に歩行障害を中心とする運動機能障害を生じる。

(2)経過

・平成20年1月下旬、下肢の痺れ感として症状を自覚。
S接骨院O整形外科、K総合病院、K治療院にて検査するも原因不明。検査期間中に症状が悪化、歩行不能となる。
N病院での検査を経て平成20年3月26日よりJ病院に入院。検査を行う。
・4月14日シェーグレン症候群と診断、現在加療中。

(3)検査所見
・口唇切開による唾液腺組織検査でSjS特定炎症反応を検出
・血液検査による血中抗体反応陰性、髄液検査(-)
・造影剤MRI検査による脊髄・神経の異常(-)
・筋肉繊維電位検査(筋電図)により、神経伝達に異常が見られる
・後根神経節(脊髄から出る神経の中継点)が障害部位と特定
・血液検査、PET-CT検査等により、合併症状は現在(-)

(4)症状
a.後根神経節異常による障害
①運動機能障害
 筋肉への信号伝達が障害されているため、左右の足を意図的に動かすことが難しい。また、膝、大腿部、左脇腹の腹筋、背筋、下腹部筋肉の運動が阻害されている。膝と大腿部の脱力あり。足部(踝から下)の運動が阻害されている。 

→正確には下記②③による入力障害により、適正なフィードバックが行われていないことが、運動機能に影響を与えていると思われる。

②位置感覚障害
 足の位置を感知する信号伝達が障害されているために、足が自由に動かせないとともに、バランスを崩しやすい。横になった状態で膝を立てて保持できない。膝を左右同じ角度にできない、膝を上げて止めておけない等。
視覚による補足機能で体のバランスを取るように訓練し、立位を保つことはできるが、目をつぶっての立位は困難。暗闇ではバランスを崩し立位保持は困難。目をつぶると、大腿部から下(特に膝より下)はどのような姿勢になっているのかわからない。

③感覚機能障害
 温感、冷感、圧感等の信号伝達が一部障害されている。膝下に常時痺れ感がある。歩行により痺れ感が増し、歩行が不安定になる。

④浮遊感と悪阻
 上記①~③の状態で歩行を行うため、足の接地感がない。長時間歩行を行うとこの傾向が顕著となり悪阻。時に嘔気を催す程度の浮遊感あり。安静臥床で軽減。
 

b.唾液腺、涙腺の分泌異常(分泌量減)
 口内、咽頭の渇きは自覚症状あり。目の乾きは検査上異常はあるが、自覚症状がない程度。風邪を引きやすく、肺の分泌腺異常により重篤化し肺炎になりやすい。

c.ステロイド剤投与による副作用
 現在は顕著な症状は見られない。倦怠感、ふらつき、夜間過覚醒、抑うつの日内変動は多少見られる。今後可能性のある副作用は後述。

(5)治療
a.ステロイド投与
 自己免疫反応の抑止と障害部位の修復を目的としてステロイド剤を投与。プレドニン30mg/日を内服。これとは別に、内服量の100倍程度のステロイドを3日連続で点滴投与するパルス療法を3クール実施した。
 2回のパルス療法、およびパルス間のプレドニン内服によっても投与の効果が顕著に現れることがなかったが、2回目のパルス後、右足の症状の多少の軽減が見られた(投薬による効果かリハビリによる効果かは不明であったが、投薬効果も見られると考えるのが妥当)。更なる症状改善を目的とし、3回目のパルスを実施。その結果、右の表在感覚症状の軽減と歩行安定、左足の多少の歩行安定が見られた。

b.症状対象薬投与
 入院中は、下腹部筋運動障害により便通促進剤マグミットを服薬中。改善により中止。

c.予防薬投与
 ステロイドによる副作用の胃潰瘍予防のためパリエット、ガストローム骨粗鬆症予防薬としてボナロンを服薬中。夜間過覚醒の頓用としてレンドルミンを処方されているが、現在は服用せず経過観察。

d.感染症防止
 ステロイド剤投与により免疫力を下げているため、感染症に罹患しやすい。またSjSにより間質性肺炎・腎炎に罹患しやすいため、手洗い、うがいの徹底と外出制限、マスク着用を行っている。しばしば風邪を引くため、頓服として消炎剤フロモックスと総合感冒PLを服用。

(6)リハビリテーション
 SjSは約60%程度の症例にステロイドの効果があると言われるが、これに加え神経障害、歩行障害の症例が少ないため、投与の効果は不明との所見であった。今回、2回のパルス療法、およびパルス間のプレドニン内服によっても投与の効果が顕著に現れることがなかった。そのため、リハビリテーションによる歩行障害の改善と筋力・柔軟性・心肺機能低下防止を平行して行った。
 下肢の位置・運動・感覚機能麻痺があるため、視覚と骨振動感覚等の補足感覚で位置感覚障害を代替し、足の位置と動作を再学習する訓練を徹底して行った。これにより5月初旬現在、一本杖でゆっくりの速さで歩行することが可能になりつつある。一方、感覚障害により足を意図した位置に置くこと、片足に重心を乗せることが難しいことから、階段昇降を安定して行うことはできていない。また、咄嗟に障害を避けるとバランスを崩しやすい。
 入院中は、病院リハビリ室での約1時間の訓練の他、自主的に約1時間のストレッチ、歩行・筋力強化・バランス補正・心肺機能訓練を約4時間程度行っている。また体重が歩行に影響を及ぼすことから食事量をコントロールし、退院時までに入院時より約10kg減量した。

2.予後
(1)治療
ステロイドパルス療法を実施後の検査で、症状に関する検査および感染症検査所見に異常は認められなかった。治療・リハビリテーション計画を作成し5月17日に退院。 

・退院後もステロイド剤の経口投与を数ヶ月~年単位で継続する。当面2週間に1回程度の外来通院で経過観察、検査、服薬調整を行う。 

・経過観察内容は、SjS症状、ステロイド副作用、ステロイド離脱症状リハビリテーション等である。
・症状の寛解によりステロイド量を漸減していく。一般に、現在内服の30mg~35mgは退院可能量。20mg以下で感染症の危険性が低下、15~10mg以下が副作用の発症確率を下げられる量と言われている。減量は、4週間毎に10%ずつ減、最終的に2.5mgずつ減量が一般的な方法。減量により症状が再発する可能性があるとともに、ステロイド離脱症状の可能性があるため慎重に減量を行う。


(2)症状
①SjS症状
ステロイド服用により症状が改善する可能性がある。この場合も数ヶ月単位でゆっくりと改善する。症例が少ないことや個体差が大きいことから、最終的な効果は不明。
・最終的に知覚感覚、運動・位置感覚障害が残存する可能性あり。初診より6ヶ月後症状固定の場合には身体障害者認定対象障害となる。認定の可能性が高い。
・症状悪化、SjSに起因する神経疾患、間質性肺炎・腎炎等の発症の可能性があるが、定期的な検査と適切な服薬、健康管理によって確率を下げることはできる。
・転倒予防。歩行障害に加え、下記②の骨粗鬆傾向に留意し、転倒による骨折等の二次疾患を避ける。

ステロイド投与の副作用
ステロイド剤投与による免疫力低下に起因する感染症発症の可能性がある。一般的な感染性疾患にかかりやすくなるため、特にステロイド量が20mg/日の期間は配慮が必要である。
・副作用による合併障害発症の可能性がありステロイド量15mg/日の期間は要注意である。いずれも長期投与により起こることが多い症状であり、生活上、健康面の留意、定期的な検査が必要。合併症の主なものは下記のとおり。
○胃炎・胃潰瘍:予防のための服薬を既に開始
○糖尿病   :常時血糖値をチェック中
骨粗鬆症  :予防のための服薬を既に開始
うつ病、不眠:常時留意
○食欲増大、肥満、むくみ(ムーンフェイス):自己管理
○一般的な感染症に罹患しやすくなる

(3)退院後~在宅生活~職場復帰の期間
今後の外来検査時の所見により変更があり得るが、現在概ね以下のとおり。

5月17日頃  退院
5月末まで   在宅療養、投薬、リハビリテーション
5月末外来通院 プレドニン3025mgに減量した
6月~     徐々に仕事を再開(勤務時間・量 要調整)
~4ヶ月    順調に推移した場合ステロイド漸減、20mg以下で
        感染症感染確率減
       *感染症・副作用要注意期間
        体調が元に戻るのに要する期間
       *この期間で感覚障害が残る場合には身体障害認定
~4ヶ月    ステロイド漸減10mg以下で副作用確率減
       *副作用要注意期間

(4)健康面での留意事項
①療養期間
 軽い運動から開始し、体力を回復する。睡眠を十分にとる。

②職場復帰期間(4ヶ月~8ヶ月)
 業務量を通常量の1/2程度にコントロールし、身体的疲労を避けるようにし、疲労を蓄積しない。当日の過度の疲労感、翌日に残る疲労感は再発症、悪化の可能性が高い。
 通勤は運動許容量、疲労蓄積ともに、人込みでの転倒の危険、感染症感染の可能性があるため、注意が必要。

③今後常に必要な留意事項
 手指消毒、うがいの徹底による感染症感染防止、また自身が易感染者であることから保菌者にもなり得るため注意が必要。風邪が重篤化し肺炎になり易いことから、喉の乾燥対策を行う。各合併症状を起こしやすい生活習慣を避ける。また、ステロイドは服薬量を誤ると身体的危険を伴う薬剤であることを自覚し服薬管理を行う必要がある。


◆勤務◆
 病状を受けて、6月1日付降格異動。前職場の責任者の立場を降りる。現在は団体直属一般職員として業務従事。職務手当等が全て外されたため、本俸の現給保証のみ、事実上の減俸。本部直営事業所を勤務場所とする。業務内容は前職場残務・引継ぎ、本部事務手伝い、予定されている新規事業の企画立案。勤務場所を本部ではなく自宅から約40分の所にし、業務内容も敢えて不明確にしてある点は、療養に対する配慮と思われる。勤務時間について、管理職ではないので自由出勤ではないが、業務内容及び勤務状況は一任されているため、事実上の自由出勤に近い。入院時に年次有給休暇を全て消化したため、現在は保有年休なし。勤務内に任意に調整して通院するような形になる。風邪などで休んだ場合には、日割で減給となる。現在は、体調確認と生活リズム確立のため、1日8時間勤務している。業務は意外とコンスタントに量・質を求められるものがあるた、時間内はキッチリと仕事をしている。残業は殆ど行っていない。

 

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