よるくま@真夜中の虹 膠原病・心筋梗塞 闘病記

膠原病~心筋梗塞/発病・入院・共存の記録 体に耳をすます日々の日記

発症。診断名がつかず、病院を転々とし苦しみが続く。

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2008年2月4日 18:27 サイボーグになる

 外出先で、腰の痛みに耐えながら、そろそろと駅の階段を下りていたら、真正面に足の痺れ云々の広告看板があった。場所を確かめて、外の会議に出た帰り道に行ってみた。

 接骨院と整形外科の違いがよくわからず、受付で説明書き渡され、まだわからずに何度も聞いてみる。整形外科が西洋医学接骨院東洋医学か?

 それにしても、身体バランスを見る写真撮り、レントゲンもなしに引っ張り伸ばし、矯正包帯グルグル巻き。サイボーグみたい。そして歩き方はロボコップ

 姿勢矯正メニューとカレンダーを渡され、丸つけろとのこと。

 果たして治るのか?体のバランスはあちこち悪いらしいことはわかり、それはそれでなるほど、という気もした。

 

2008年2月12日 10:38 しびれ

 接骨院の表の丸付けは、まったく効果がないためやめた。

 職場の隣りの駅の整形外科に行き、レントゲンを撮ったが、特に異常は認められないとのこと。

 右足のしびれが取れない。腰痛は治ったが、足は力が入らず。速く歩けない。左足の踵もしびれ始めてる気がする。両足になったら歩けないので、これから総合病院に行く。ちょっとまずいかもしれないなって、昨日の夜中に思った。何の病気だろう?

 

2008年2月15日 13:07 なんだか病気

 総合病院で検査したけれど結果はまだわからず、原因不明のナントカというのかも知れないと言われ、更に検査が追加になった。普通に歩いていても浮遊感が常にあるのに、気分が病気になってきて、吐きそう。

 

2008年2月17日 19:20 ギランバレー症候群

 「ギランバレー」、そういう名前の病気の疑いなんだ。多分フランス語のつづりでカルテにそう書いてあった。和名になおすと「白血病」だったりするのかと思ったりした。医者は患者にわからないようにそういうトリック使うからなぁ。

 一日してからネットで調べてみた。難病指定だが、まあまあの病気だ。進行性だがピークが一月以内に来たら自然治癒するらしい。症状がそっくりだが、私のは軽いかもしれない。ネットに闘病記があり、参考になる。ちょっと気になるのは「5%は死亡」ってとこだけど。あんまりそういう実感はないなぁ。

 とりあえず処方箋を貰いっぱなしの薬を取りに行く。歩くのはちょっと苦手。

 せっかく外に出たんだし、帰るのも淋しい。足の麻痺は右から左に進行中なので、次に腹筋に症状が来たら、入院なのだ。

 本屋にも自力で行けなくなるかもしれないのでフラフラ歩きながらTSUTAYAに。そういう状況でどんな本を選ぶのかも興味深いな。ジョナサンでは、今後食べられなさそうな、ピザの円いのを頼んで腹いっぱい食べた。うーん、ピザうまい。

 とりあえずこれからカフェオレ飲んで、帰ったら入院の準備しよう。

 

2008年2月18日 2:51 古い日記

 古い日記を読んでみた。一年前、何だか激動だな。今もよっぽど転機で激動なんだろうけど、一年前、一生懸命生きて、一生懸命書いている。日記の文章が丁寧だと思った。次々と色々な人に会い、自分の意思で流されてみたりしている。その頃に大切な人にも会っていたんだ。その時の感覚を思い出した。嬉しかったんだろうな。

 今、体が不自由になりつつあって、このまま入院するかもしれない。もちろんちゃんと生きて帰って来るつもりでいる。ただね、万が一ということもあるし、病気が急変するのはコントロールできないから、ちょっと振り返って総括してみたい。そんな風にここ数日思っていた。夜中だから少しだけ書いて眠ることにする。

 私が一番幸せだったのは、人に深く愛されたことだと思う。私を深く思ってくれた人がいて、私は気持ちを開くことができ、通じ合い、温かい気持ちに包まれて生きてきたと思う。出会ったたくさんの人にありがとうを伝えたい。

 仕事も満足。私の支援への思いは一貫していたし、それぞれの場面で存分にやってきた。そして私は自分のしてきたこと、感じてきたことをたくさんの人に話す機会を持てたのが幸せだったと思う。多分プレゼンだけで数千人、見学者への説明を入れたら一万人くらいか。書いた本を読んだ人を入れたら更に多いだろう。これだけの人に自分を伝えることができて、それぞれが感じ、持ち帰り、更に取り組みを広げた。特に十数回のプレゼンは聴いた人が涙を流し、笑い、感動してくれた。こんな体験をできる機会を持てる人ってあんまりいない。幸運であると共に、それが私の仕事の成果なんだろうな。

 細かく書いていったらきりがないので、今日はこのくらいにしよう。

 明日の朝も目覚めますように。

 

2008年2月18日 13:59 MRI検査

 総合病院、今日はMRI検査だけなので、ちょっと安心だった。それでもあの検査装置のトンネルは思ったよりずっと狭くて嫌なものだった。閉所恐怖症にはたまらない空間だろうな。

 そしてビビビビ…という音は不安をあおる。装着したヘッドホンは遮音のための物だが、静かな音楽を流す位のサービスが欲しいな。

 結局ビビビビ…は約20分で終わり今日はおしまい。木曜が問題の、痛い髄液検査だ。

 

2008年2月19日 0:14 夜になって不調

 どういう訳か受取人が親になっている保険の名義変更手続きが必要で、それが済んでいないと入院保険も下りないし、死亡の場合もこれまで払った保険料が無駄になるらしい。そんなことがわかって、具合が悪いのに印鑑証明だとか銀行の改印の手続きをしに行って、その書類を夜になって速達で出してきた。これで入院可能か?


 郵便局の深夜窓口に行ったついでに、TUTAYAに行ってみた。好きなことをすれば元気になるかとも思ったのだが、寒さもあってか、これまでで足の調子は両足とも悪く、特に左足の麻痺が強いので着地感がなくて三半規管がぶれる。その結果船酔いのような気分になっている。

 TUTAYAでは財布から2度にわたって十円玉を床に落とし、2回目はレジの女の子が拾いに走ってくれて、慌てたのでその子が磨いた床で滑ってトンと軽くしりもちをついた。それがおかしくて、その子と顔を見合わせて笑ってしまった。「ありがとう」と言って店を出た。体が元気だったら、とっても気持ちの良い出来事なんだろうな。疲れていて、私はほんの少ししか笑えなかった。その子のお陰でちょっとあったかい気持ちになれた。買ったのは吉本ばななの文庫2冊。


 三半規管の揺れでちょっと吐きそうになりながら、やっと帰ってきた。普段なら相当近い距離の郵便局が、息が切れるほど遠かった。吐き気は腹筋とか消化器官の筋肉の麻痺によるものなのかはわからない。


 一日怖くて悲しくなって涙が出たり、悔しくて絶対に治ると思ったり、夜になって苦しいのでかなり気が滅入ったり、気力が上がったり下がったりしている。

 髄液検査は痛くて嫌だと思っていたが、このままであるよりはずっとましだと思ってきた。病名も治療もなく、治る見通しが全く立たない宙ぶらりんの中で吐きそうになっているより、何か見通しが欲しい。そのなかで先のことを考えたり、悩んだりする方が全然ましだ。

 

 明日は、今週末どうなるかわからないので、とにかく仕事の整理に行く必要がある。這ってでもいかなければ…。

 

2008年2月21日 8:33 行って来る

 これから、脊椎に針をブッ刺す検査などを受けに行く。渋滞を避けるために早く出たので、病院の駐車場で1時間以上過ごしている。

 

 痛いのはもうよくわかった。あきらめた。早くこの体の不快な症状を消して欲しい。昨日一日ギリギリで仕事を踏ん張ったら頭がフラフラで吐きそうになった。バランスをつかさどるどっかの機能が故障してるみたいだ。横になると少しいい。縦になると足のしびれとともに頭の不快が来る。

 

 今日は暖かい一日みたいだ。何とか乗り越えたい。

 

2008年2月21日 17:42 最悪の事態

 病名が最悪なのではなく、「異常所見なし原因不明」という、対処法なしの最悪の事態。原因が見つからないので、治療方針も薬も何もなし。

 今日の立てない状況での車椅子移動や眩暈の転倒も対策なしという事か。

 吐きそう。

 

2008年2月22日 16:07 電流検査

 今日は神経に電流流す検査だった。何も出ないだろうなぁ。どうでもいい気分で検査を受けた。一通りの事はやったので、たいていの事では驚かない。

 西洋医学の限界では?と思い始めているので、しばらく変わりなければハリ治療に行ってみようと思っている。それで治ったら中国三千年の歴史を信じるよ。

 

2008年2月24日 1:23 足がゆうことをきかない

 一日横になっていた。最近よく眠れる。この間は、MRIの大音量の電磁波の中でも眠っていたので自分で驚いた。

 夜になってコンビニまで歩いた。距離は四百メートル位か。フルマラソンみたいに遠い。治るどころか、動かしていない分体の動きは目茶苦茶で、足が全くコントールできない。酔っ払いの千鳥足のようでもあり、操り人形のようでもあり。ギクシャクとした動きになる。

 目まいは外の方が少ない。遠くを見ているせいだろう。

 今日は春一番が吹いた日だったが、夜になって風が冷たくなった。かなりギクシャクで休みながら歩いていて、まだ外を歩くことができているのでちょっとしみじみ、少し目まいがするが冷たい風に当たると醒めるのも早い感じがして気持ちいい。

 

 全く治っていなくて困ったなぁ。これからどうしたらいいんだろうか、と思いながらも、気持ちが塞いでしまうことはなくて、どうしてか爽快な気持ちだった。

 

2008年2月25日 18:44 体に耳をすましてみる

 今日も仕事を休んだ。安静にしていたら回復すると信じて二日間横になっていたが効果なく、むしろ筋力低下と体を起こしていなかった分、脳のバランス感覚がおかしい。そして、とても仕事に行ける風体ではない感じ。病人らしい洗わない髪と不健康な顔色。少なくとも責任者だからねぇ、余りにも病人風はまずい。でも回復のめどもないんだけど。

 一番嫌なのは浮遊感。乗り物酔い感覚に似てる。それと左足の強いしびれ。時々ピリピリと痛いこともある。今日はリハビリ日なので、一日体を起こしていた。仕事の書類を入力したい。が、体が重い上にパソコン画面見るとめまいがする。この思いに対する動けなさは鬱っぽいな。結局書類は夜にやることにして片付けをした。最近机の前の椅子をどけて、机の下に小さいお膳を突っ込んで、床に座ってパソコンしたり革細工したりしてた。足を曲げて座るのは神経にも血行にも悪そう。それで、フラフラの足で片付けをした。久しぶりに椅子に座るとめまいがする。キャスター付きの回る椅子なのがいけないんだろうな。

 夕方になって、車と電車を乗り継いでターミナル駅へ。この足になって初めての電車だ。車さえアクセルの感覚が危ういのに果たして電車に乗れるのか?駅の階段を降りられるのか?ホームから落ちないか?揺れる電車で立っていられるのか?かなり勇気の要るチャレンジ。電車に乗るだけの事がこんなに不安なんて、考えられなかった事だ。
 幸い最近はバリアフリーになりつつあるので、エレベーターとエスカレーターを乗り継いで行けばなんとかなる所も多かった。辛うじて車近くまで戻ってきたが、朝の通勤は無理だな…。階段が降りられない。さぁ、明日からどうするか?


 まだ夜明けは遅い。3時半頃に目が覚めた。朝、渋滞前に車で職場に行きたかったので、5時には起きたいと思っていた。起きるには早く、眠るには短い時間。静かに布団の中で考えた。山積する仕事。たくさんの締切が次々に思い浮かぶ。少し焦る気持ちもあるが、本当はどれもどうでもよかった。何かとのバランスの中で思う時、仕事の重みは意外にも低い。

 

 体。体に耳をすましてみる。先に麻痺した右膝が温かい。血が巡っている感覚がある。これまで、冷たいと感じた事はあったが、温かいのは初めてだった。足を動かさずに、自分の足の位置と形をイメージしてみる。右足は、確かにある。左足はスネから下辺りが曖昧。お腹から、ゆっくりと下に気持ちを移していく。温かいものが膝に宿る。気、なのだろうか。確かに何かを動かすことができる。神経の微細な細胞が再生する気配を感じる。体全体が温かくなり、闇のなかで気持ちが落ち着いた。セックスの後にあるような弛緩と静寂。

治る気がした。治せる。そんな気がした。

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